ウィザードリィ #1 狂王の会見場
ロバート・ウッドヘッドさんは、日本においてのCRPGの元祖*1ともいわれる Apple II版の Wizardry 開発者の一人であり、シナリオ #1 狂王の試練場 の中では登場人物であるトレボー王(ロバートの逆さ読み)その人にあたる人なんですよ!(※今回はアニメ関連ビジネスで来日されたとのこと)
*1 CRPGの元祖 … ネットの普及により当時の状況の研究が進み、日本においてCRPGの普及に大きな役割を果たした、という表現が適当か。ゆずもデザイン「ウィザードリィの深淵」「ウィザードリィの深淵Ⅱ」などに詳しい。
狂王トレボーと、盗まれた秘宝、そして地下深きに立てこもる大魔術師ワードナ──。
いやー、当時、本当に冒険心をくすぐられましたから。ウィザードリィが好きで好きで堪らなくて、地下迷宮を探検し続け、やりこみましたし、好きすぎて先般スマホ版アビスアンドダークを開発し、世に送り出した者の一人としては、まさに尊敬する神。文字通りの創造神ですよ、プログラムを組んだ人ですからね。過言じゃなく。
エイコードバンクは記事媒体にはあたらないので取材は厳しいかな、、と思いましたが、またとないチャンス! 思い切って申し込んでみたところ、、何日かしてコーディネーター様から取材許可連絡を貰えたんですよ。 うおおおー。ま、ま、まじかー トレボー様に会えるぜッ
逸る心を抑えつつインタビュー当日、アニメジャパン2016会場の東京お台場のビッグサイトへ向かったんです。そして、なんとなんと本物のロバート・ウッドヘッドさんが目の前に! もうこの時点で興奮MAX状態。当のロバートさんは穏やかな表情でリラックスして待機していてくださり、インタビューは終始、和やかムードで進みました。
──初めまして。エイコードバンクの齋藤です。お会いできて光栄です。よろしくお願いします。さて、日本ではWizardryの発売から四半世紀たってなお、ウィザードリィの名を冠するゲームが発売され、プレイし続けられています。本家ウィザードリィの開発者としてコメントを頂ければ。
ロバート 率直に言ってショック(衝撃的)、個人的にビックリ、という気持ちだ。
──私は友人宅でアップルII版のウィザードリィを目にし、呪文名を入力しているところを見ました。まだその時は面白さを理解できませんでしたが、ファミコン版でウィザードリィと再会し、とことん遊びました。
ロバート 私の知っている中ではファミコン版がベストだろう。(冗談っぽい口調で)ファミコン版に私が関わらなかったのが良かったと思うよ(笑)
──そうなんですね(笑) 今なお人気が高い、ファミコン版が版権の問題からDL販売がされていません。どこかの法人から再販されませんか。
ロバート ノーアイデアだ。アップルII版のエミュレータを公開している人がいることは知っているが。
──私はウィザードリィが好きで好きでたまらず、プログラマーの三浦らと共にエイコードバンクとして初期ウィザードリィ風のアビスアンドダークを開発し、幸い好評を得ることが出来ました。(ここでiPhone 版 Abyss and Dark #1 を触ってもらった)
──開発時に残念だった点としては、夢にまで出てきたモンスターや武器・防具、そして呪文などの名称が使えないことでした。版権に抵触しないように開発いたしましたが、この四半世紀で、シェアードワールドという考え方も広まりました。ウィザードリィほどの名作を、後世のため、全世界のウィザードリィファンに開放する、という選択肢はありませんでしょうか。
ロバート 今はWizardryの版権等を所有していないので、現在の権利的なこと詳しく知らない。そういうわけでシェアワールドについても権利的なことは残念ながらお答えできない。ところでWizardryはいろいろ影響を与えたのは確かだが、Wizardryにしてもその前に存在した他のものから影響を受けている。延々と連なった長い鎖の一つの輪っかの一つに過ぎないと思う。
ロバート 呪文名、スペルネームについては、ウェールズ語をもとにしたフェイクだ。その呪文名をプログラムで現すのは工夫したんだ。48K。ハッシュを使って短いコードでうまく書けたんだ。
──以前にどこかで読んだことがあります。有名なエピソードですね。ちなみに、短いコードでプログラミングが出来た時、どんな気分でしたか。
ロバート それはもう安心したよ。
──ゲーム内に出てくる、トレボー、ワードナ、マーフィーは、現実世界ではどういうご関係でしたか? 学友でしょうか?
ロバート 同じ大学での知り合いだね。私はプログラミング。ストーリーはアンドリュー。マーフィーにはテストプレイをしてもらったんだ。どんな風に出会ったのかもうよく覚えていないな。私はパラディンというゲームを作っており、アンディはベーシック言語でゲームを作っていた。そして出会ったんだ。ゲームデザインは解決していて、アンディがウィザードリィを思いついていた。二人は協力することになって、私がパスカル言語で書き直したんだ。
──友達関係として何か思い出すエピソードはありますか?
ロバート 個性が強くて、最初はぶつかり合っていたが、今は親友になった。
──開発していく中で、問題や制約があったと思いますが、オタク的なエピソードはありますか。
ロバート その時は海賊版を気にしていた。コピープロテクトの実装について頭を悩ませていた。思いついた対策は3つあって、一番優しいのが、コピーをしたら、遊べなくなるものだ。次に厳しいペナルティは、、遊ぶうちにどんどんモンスターを強くしクリアできないくらいにプレイヤーをいじめるもの。一番厳しいペナルティは、そのコンピュータが6時間スリープモードだったら、1-900 に勝手に電話をかける *1 というものだった。訴訟される恐れがあるからね、一番優しいプロテクトにしておいたんだ(笑)
*1 アメリカの有料電話のこと。日本でいうテレクラ
通訳担当の奥様である植木さんによると、「いつも冗談ばかり言ってるのよ(笑)」とのことである。実際にインタビュー中も冗談っぽい口調で、楽しげに話すのが印象的でした。Wizardry中の、ところどころに出てくるイタズラっぽいメッセージなど、ロバート氏の人柄が現れているのだなぁと思ったりも。
ともあれ、貴重な機会を頂きました。ありがとうございました!
コーディネイト: 菊川 幸夫
通訳: 植木 夏美
聞き取り: 齋藤 雅昭
写真: 本浪 隆弘2016/03/26
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